田中靖人

中国の汪洋副首相が「中華人民共和国観光法」に関する国務院の会議で、中国人の海外旅行について「一部の観光客は資質や素養が高くなく、しばしばメディアに非難され、中国人のイメージを損なっている」と述べたところ、ネットで反感の声が相次いでいる。 同法第13条は「旅行者」に対し、公共の秩序と社会道徳を順守することや現地の風俗習慣、文化、伝統、宗教を尊重する義務も課している。汪氏の発言は、この条文を踏まえたものとみられ、マナー違反の例として、公共の場で大声で騒ぐ、観光名所に文字を刻む、赤信号を無視する、ところかまわず痰を吐く、を挙げた。 中国人海外旅行客のマナーの悪さは国営メディアも苦言を呈するほどで、新華社通信は、「大声で騒ぐ、列に割り込む、ゴミをポイ捨てする、立ち小便をする、殴り合いのけんかをする、買い物するだけで文化を理解しない。中国の旅行客は永遠に素養が足りないのか」と嘆いている。国家観光局も、「ホテルの備品を持ち去る」「値引きしない店で値切る」「外国人と強引に記念写真を撮る」など「海外旅行マナー違反行為10カ条」を発表して注意を呼びかけている。 中国版ツイッター「微博」などでは汪氏に賛同する意見は少ない。「海外旅行ができるのは金持ちと高官だけで、庶民は無理」との声に始まり、「イメージに気をつけるべきは旅行客ではなく、外国メディアが無視できない汚職官僚だ」と官僚批判に行き着く。 さらに、「西側の政府職員は絶対、自国民をこのようには論評しない。中国政府のマナーの悪さこそ国際イメージを損なっている」との主張もある。また、観光法についても「本末転倒。海外に行く者だけ素養を高めればいいのか」と評判は良くない。 同じネット上では、人民網が論評で汪氏の主張を擁護している。「世界は中国人旅行者を通して中国を見ている。旅行者一人一人が中国のイメージの代表者なのだ」。。。